試作設計書 · 2026-09-28

靴とベルト

NFC を 3 枚持つ靴と、NFC を内蔵したベルト。スマホを当てるとブラウザで情報が開き、そのまま通報もできます。色は内側にはさむ紙で変えます。3D プリントした部品と市販の部品を組み立てれば作れることを前提にしました。

靴 (空色の紙) ベルト (茶の紙)

1. フォルダの中身

ファイル中身
靴.usdz一足 (実寸)。紙の色 9 種を variant で持つ。NFC 3 枚は NFC_1_Instep / NFC_2_Heel / NFC_3_Side の名前で入っています。iPhone で開くと AR で置けます。
靴_電子ペーパー.usdz / ベルト_電子ペーパー.usdz電子ペーパーのモデル (柄・濃さを variant で持つ)。同じ中身で、開いた時にどちらのモデルが出るかだけが違います。
ベルト.usdz腰回り 85 cm で締めた形。紙の色 7 種 (モノクロ + 茶)。NFC はバックルの平板の中 (Buckle/NFC_Belt)。
分解図.usdz右足を上下に開いた図。電池・基板・受電コイル・蓋の収まりがわかります。
接続ページ/NFC から開くページ。?t=instep|heel|side|belt で開く画面が変わります。
印刷用/STL 11 個 (単位 mm)。全部「穴のない閉じた形」であることを確認済み。

2. 比率

どこ寸法比
靴底の最大幅全長 280 → 幅 107 mm1 : φ² (2.618)
靴底の厚みかかと 30 → 前足 18.5 mmφ : 1
履き口の前端つま先から 173 mm全長 / φ
外側の NFCかかとから 173 mm全長 / φ
かかとの NFC16 × 22.6 mm の角丸1 : √2 (白銀比)
バックル外形27.2 × 44 mm1 : φ (いただいた絵の枠の比)
剣先 (ベルトの先)幅 35 × 長さ 49.5 mm の楕円1 : √2

3. 3 枚の NFC と書き込む URL

見えるのは甲の中央の 1 枚だけです。黒いガラスの丸 (φ24, 金属の細い縁) に白いしるし 􃆲 を入れ、ここに当てればよいことがひと目でわかるようにしました。残りの 2 枚は靴底の壁の中に隠します。靴底の TPU は電波を通すので、見えなくても読めます。

場所チップ役目書き込む URL
甲 (見える)NTAG 424 DNA φ25 + 黒いガラスのしるし靴の情報・通報への入口https://(置き場所)/kutsu/?t=instep&e=…&c=…
かかと (右, 靴底の中)ST25DV04KC + 22×16 アンテナ通報・状態・電池…/?t=heel&s=(状態)&g=(署名) — 靴の基板が書き換える
かかと (左, 靴底の中)NTAG 424 DNA φ16通報 (状態なし)…/?t=heel&e=…&c=…
足裏 (かかと, 靴底の中, 左右とも)NTAG 424 DNA φ25 (平らに寝かせて埋め込む)床の読み取り機 (マット) で入退室 — Launch…/k/?t=sole&e=…&c=…
外側 (靴底の中)NTAG 424 DNA φ16 (市販の丸いもの)色・型紙・持ち主の設定…/?t=side&e=…&c=…
ベルト (バックル)金属用 NTAG 424 DNA (フェライト付き, 6.8×36 mm の窓)ベルトの色・持ち主の鍵…/?t=belt&e=…&c=…

e と c は NTAG 424 DNA の SUN 機能がタップのたびに自動で埋める暗号文と認証コードです。書き込みには NXP の「TagXplorer」(PC) か「NFC TagWriter」(Android) を使います。書いたら必ずロックしてください。

4. 電子部品 (右足のポッドだけ)

分解図

ポッド (外寸 76 × 54 × 10 mm) は土踏まずの下にあり、靴底の裏から入れます。土踏まずは体重がいちばんかからない場所なので、電池がつぶれにくくなります。蓋は O リングと M2 ネジ 4 本で留めます。ネジを外せば電池を交換できるので、電池が弱っても靴を捨てずに使い続けられます。左足には電池を入れず、NFC だけにします。

部品例役目
通信 + 位置Nordic nRF9151 (LTE-M / NB-IoT + GNSS)SIM があれば靴だけで通報。SIM なしでも GNSS で位置を記録
SIMeSIM (MFF2) またはナノ SIM — 任意なしで組むときは載せない
動的 NFCST ST25DV04KCかかとの URL を基板が書き換える (状態・位置・電池)
加速度ST LIS2DW12「かかと 3 回」と転倒の検知
充電・電源TI BQ25120A満充電を 3.6 V に設定 (リン酸鉄の満充電電圧)
置くだけ充電TI BQ51003 + φ40 前後の Qi 受電コイル + フェライト板靴底を Qi 充電器に置いて充電。穴がないので水に強い
電池リン酸鉄リチウム (LiFePO4) の薄型パウチ 70 × 50 × 3 mm (保護回路・NTC 付き)燃えにくい・交換式。容量は見積もり 400〜600 mAh (要確認)
安全部品ヒューズ + 温度センサー0〜45 ℃ の外では充電しない
手応えコイン型振動モーター φ8通報を受け付けたら震える
アンテナLTE-M 用フレキ + GNSS 用チップかかとの内側に沿わせる (靴底のトンネルを通す)

型番は「この種類の部品で成り立つ」という例です。在庫・価格・細かい電気特性はまだ調べていません。基板の回路図と配線 (アートワーク) はこの設計書には含まれていないので、別に設計が要ります。

Bluetooth は積みません。iPhone のブラウザは Bluetooth を使えない (Web Bluetooth に非対応) ため、積むと専用アプリが必要になります。代わりに、SIM がなくても「かかとの NFC に状態を書き込む」ことで、ブラウザだけで通報の情報を渡せるようにしました。

5. 電池のもち (計算)

下の値はすべて私が置いた想定値です。部品の資料で確かめたものではなく、実物で測ってもいません。数字を変えると結果が変わります。

電池の容量 (控えめに) mAh
使い切れる割合 %
寒さ・劣化の余裕 %
待機電流 (全部合わせて) µA
GNSS 1 回の電流 × 時間 mA × 秒
GNSS の回数 (歩き出したとき, 1 日) 回
SIM あり: 1 日 1 回の生存連絡 mAh

1 日に使う量 mAh → もち

減る量のほとんどは GNSS です。1 か月を下回りそうなら、GNSS の回数を減らすのがいちばん効きます。

燃えにくくするために

要確認: nRF9151 が動く最低電圧と、リン酸鉄の電圧 (ふだん約 3.2 V、空に近いと 3.0 V を下回る) が合うかを、部品の資料で確かめる必要があります。合わなければ、昇圧回路を 1 つ足します。

6. 通報の流れ

  1. 本人: かかとを 3 回強く踏む → 靴が震える → SIM ありなら家族へ位置つきで送信。SIM なしなら、かかとの NFC に「通報中・時刻・最後の位置」を署名つきで書き込む。
  2. 近くの人: かかとにスマホを当てる → 通報画面 (119 / 110 / 家族へ位置を送る) と、赤い枠で靴の記録が出る。
  3. 電池が切れていても NFC は電池なしで動くので、通報画面は開きます (靴の記録だけが出なくなります)。

7. セキュリティ

今の接続ページは試作です。署名の確認と持ち主データの保存にはサーバーが必要で、まだ作っていません (今は持ち主のメモがそのスマホの中にしか残りません)。

8. 印刷の設定

ファイル材料刷り方
shoe_R/L_soleTPU 95A (白)外壁 3 周 + ジャイロイド 20〜25%。裏を下に。ポッドの穴は上を向く
shoe_R/L_upper透明 TPU 85A花瓶のように 1 枚壁では足りない (1.8 mm)。外壁 4 周・充填 100%。遅め (20 mm/s 前後)
pod_cage / pod_hatchPA12 (MJF / SLS) または PETGネジ下穴 φ1.6 (M2 タッピング)
belt_strap_spiral透明 TPU 95A幅 35 mm を高さにした渦巻き (126 × 130 mm)。どの造形機にも載ります。刷ったあと、ぬるま湯で温めて伸ばす
belt_strap_straight同上長さ 979 mm。1 m 以上の大型機があればこちら
belt_buckle_metal_withNFCwindow / prong / keeper金属 3D プリント (AlSi10Mg またはステンレス 316L)研磨 → アルマイト。前の平板だけ濃い色にすると絵の通り

「特殊な 3D プリンター」の候補: TPU を刷れる FDM (直接押し出し), 樹脂粉末の MJF / SLS, 金属の SLM (外注サービス)。

9. 組み立て

靴

  1. 接続ページの「色」から型紙を印刷し、合成紙 (ユポ紙 0.2 mm など) を切る。切り込みは点線まで。
  2. 靴底を刷る時、高さ 2.4 mm で一時停止し、かかとの真ん中のくぼみに足裏の NFC (φ25, URL を書いてロック済み) を置いて続きを刷る (左右とも)。
  3. 靴底の上面の縁の近くにある 2 本の細い溝 (かかと・外側, 幅 1.2 mm) に、URL を書いてロック済みの NFC を差し込む。右足のかかとは ST25DV のアンテナで、配線をトンネルに通す。溝はアッパーを貼ると上から塞がって見えなくなる。
  4. 甲の NFC をアッパーの内側に貼り、表の同じ位置に黒いガラスのしるしを接着する。
  5. 色紙をアッパーの内側に沿わせ、市販の中敷き (薄いもの) で押さえる。
  6. アッパーの下の縁を靴底の上面に TPU 用の接着剤で貼る。右足はかかとの配線を靴底のトンネルに通す。
  7. 右足: ポッドに基板・電池・振動モーターを入れ、蓋にコイルを貼り、O リングをはめて裏から M2 ネジ 4 本で閉じる。
  8. Qi 充電器に置いて充電が始まるか、かかとにスマホを当ててページが開くかを確かめる。

ベルト

  1. 渦巻きで刷ったストラップをぬるま湯で温めて伸ばす。
  2. 金属用 NFC (フェライト付き) を、バックルの濃い平板の窓 (6.8 × 36 mm, 深さ 1.2 mm) に入れ、透明エポキシで面一に埋める。枠の切れ目 (幅 0.5 mm, 軸の棒の上) もエポキシで埋める。
  3. 色紙 (幅 31 mm × 4 本) を、裏の溝のブリッジの下に通す。
  4. ピンの C 形を軸の棒に通してペンチで閉じる。根元を軸の棒に巻いて折り返し、シカゴネジ 2 本で留める。
  5. ベルト通しを通す。

10. 電子ペーパーのモデル

電子ペーパーの靴 電子ペーパーのベルト

紙を差し替えなくても色が変わるモデルです。紙のモデルはそのまま残し、どちらも同じ靴底・同じ接続ページで動きます。ページは NFC の URL に付けた m=e (電子ペーパー) / m=p (紙) で画面を切り替え、どちらも付いていないときは両方を選べます。

紙のモデル電子ペーパーのモデル
見た目透明アッパー (艶消し) + 色紙黒い下地の上に電子ペーパー 54 枚 (18 列 × 3 段)。表面は光を散らす加工で映り込まない
色どんな色でも (紙しだい)白〜黒の 5 段と、区画ごとの柄 (グラデーション・縞など)。茶や鮮やかな色は出ない
色の変え方型紙を刷って差し替え接続ページで選び、スマホの画面を光センサーに当てる (3 秒の点滅)
電池右足だけ左右とも (左は通信なし・小さなマイコンだけ)
ベルト電池なしストラップの先 (ピン穴の側) の下に薄い電池と基板を隠す。Qi で充電

なぜ区画に分けるか

電子ペーパーは紙のように一方向には曲がりますが、つま先のような丸みには 1 枚では沿いません。BMW が色の変わる車で使った E Ink の膜も、車体に合わせて切り分けた区画を貼っています。区画は 1 枚ずつ別の色にできるので、柄も作れます。

NFC は「窓」に

電子ペーパーには電極の膜があり、NFC の電波を遮ります。甲のしるしの下だけ電子ペーパーに丸い穴を開け、残りの 2 枚は靴底の中に置いたので、電子ペーパーの面に窓はありません。

画面の光で送る理由

iPhone のブラウザは NFC に書き込めず、Bluetooth も使えません。画面の白黒の点滅なら、どのスマホのブラウザからでもアプリなしで送れます (昔の腕時計 Timex Datalink と同じ考え方)。受け取るのは靴の光センサー 1 個です。

繊維状の電子ペーパーについて

繊維そのものが色を変える布は研究として発表されていますが、靴に使える市販品は見つけられていません。衝撃を和らげる役目は電子ペーパーではなく下地 (TPU やニット) が担うのが現実的なので、今は区画の方式にしています。繊維型が手に入れば、区画をそれに置き換えるだけで済む構造です。

11. 電池は何年もつか

12. 汎用品でも使えるか

部品汎用品で失うもの
スマホNFC が読めるスマホならどれでも (iPhone XS 以降はアプリなしで読める、Android は NFC をオンに)—
NFC安い NTAG213 / 215 のシールでも、ページは開くコピーの見分け (タップのたびに変わる暗号) がなくなる。画面の「未確認」のまま
充電器市販の Qi 充電器—
電池同じくらいの大きさのリン酸鉄リチウム (保護回路付き)形が違うと殻に合わない
ネジ・Oリング・シカゴネジ市販品—
色紙ユポ紙など、どの合成紙でも—
電子ペーパー形に合わせた特注になる見込み—
今持っている靴やベルトNFC シールを貼るだけで、情報と通報のページは使える電池を使う機能 (自動の通報・状態の書き込み・色替え) はなし

14. プログラムとサーバー

ネットに置いた接続ページ: https://kutsubelt.pages.dev/k/ (Smart Ring は /r/)。NFC に書く URL はここを指します。

部分中身確かめたこと
画面の点滅を受け取る (靴・ベルト・Smart Ring の本体)プログラム/firmware/optical_rx.c60 Hz と 120 Hz の画面、部屋の明かりのちらつき、雑音、光センサーの遅れを入れた模擬で、各 200 回すべて受け取れた。点滅なしの雑音 10 分で誤って受け取ることは 0 回
かかとの状態に署名 (靴の本体)heel_state.c + sha256.cSHA-256 は公式の例と一致。署名は Python とサーバーの計算の両方と一致。中身を 1 文字変えると不一致。URL は 186 文字 (かかとの NFC は 512 バイト)
光の予算 (Smart Ring)light_budget.c光を 1 日 20〜180 秒使う 8 通りの模擬で、どれも 30 日以上もった (予算なしでは最短 10 日)
NFC の本物確認 (サーバー)プログラム/site/functions/NXP AN12196 などの公式の試験用の値で、当てはまる 20 件すべて一致 (わざと壊した値は不合格にできた)
サーバーの流れ同上手元 13 項目、本番 15 項目、ブラウザでの一連の操作 (甲 → ベルト → 外側で保存) がすべて通った

サーバーがすること

タグを本物にする手順

  1. node tools/provision.mjs tag <UID> <instep|heel|side|belt|ring> <shoe|belt|ring> <持ち主ID> で、タグに書く 2 つの鍵と URL が出て、サーバーに登録される。
  2. NXP の TagXplorer などで、鍵 1・鍵 2 と URL (e= と c= の位置に暗号を埋める設定) を書き、ロックする。
  3. かかとの基板の鍵は node tools/provision.mjs heel <靴の番号> <持ち主ID>。

親鍵は ~/work/kutsu-belt/tools/.master にだけあります。これをなくすと、書いたタグをすべて確かめられなくなります。ネットに出さず、別の場所にも控えてください。

まだのこと

13. まだ確かめていないこと (実物)

参考: E Ink × BMW iX Flow / 10 年保存したリン酸鉄電池 (6 ℃で容量 96〜98% が残った研究) / NTAG 424 DNA データシート / On-Metal NFC Tags (Seritag) / Anti-Metal NFC Tags (Shop NFC)